
ソフトバンクグループの孫正義氏の「右腕」だったアロック・サーマ氏が、著書「右腕が見た孫正義『クレイジー』が世界を変える瞬間」で、同社の大型案件の舞台裏を内側から描いている。
サーマ氏はソフトバンクグループインターナショナルの元社長兼CFO。インド出身で、ペンシルベニア大学ウォートン校でMBAを取得し、モルガン・スタンレーのマネージング・ディレクターを経てソフトバンクに入社した。孫氏がかつて後継者として招いたニケシュ・アローラ氏(現パロアルトネットワークスCEO)の友人で、アローラ氏に請われての入社だったという。
成功も失敗も実務家の視点で
本書ではArmの買収、SprintとT-Mobileの合併、Supercellの売却、クーパンへの出資、アリババ株の売却などが語られる。大失敗に終わったWeWorkへの出資も含まれ、外部からは見えない投資判断の思考を追体験できる点が特徴だ。
アローラ氏を孫氏が「切った」背景や当時の確執にも触れられるが、結論を断定せず、取引や人間関係の紹介にとどめている。人や企業、社会をどう動かすかという交渉やコミュニケーションが、投資家の視点で濃密に描かれる。
「読ませる」文章力
孫氏自身の言葉は多くないものの、身近な人物の目を通して実像が浮かび上がる。スパイ小説のようなプロローグや、音楽・映画を引用した小見出しも印象的だ。経営者の本はライターが聞き取って書く例も多いが、本書は著者のこだわりや人生観がにじむ。なぜこれほど巧みに書けるのか、その答えは巻末で明かされる。
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